2018/01

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オールドレンズというのはフィルム時代に設計されたレンズで、これを現代のミラーレス一眼につけて遊ぶのが一部の人の界隈で流行っている。オートフォーカスも使えないし、絞りも自分で変えなければいけないが、それでもレンズを操る感覚が楽しいといわれ、ミラーレスカメラのソニーαシリーズや富士フイルムXシリーズの人気を押し上げる一因になった。これが流行った理由はいろいろあるだろうが、最大の要因は単にレンズの価格がめちゃくちゃ安いことだろう。

 

記事冒頭に挙げた2個のレンズは明るさも焦点距離もほとんど変わらないのに40倍近い価格差がある。左がSonnar、右がロッコールだ。今回使うのはミノルタのオールドレンズだが、これ以外にもニッコールとかタクマーの単焦点標準レンズは、現代のズームレンズより画質が高く、明るくて桁違いに安いので人気である。状態がそこそこ良くても2000円とか4000円くらいで手に入る。プレミアがついているズミクロンとか凹みウルトロンですら現代のレンズに比べればまだまだ安い。

 

もちろん設計が古いぶん現代のレンズとは差はある…コーティングが古かったり、周辺部の結像が緩かったり…。しかし絞り込むことである程度はそれは解消されるといわれている。が、具体的にどの程度差があるのかはあんまり検証されていない。たぶん、する意味がないからだろう。オールドレンズを使うのはそのユルさを味として楽しむためなのだ。大人の粋な遊びなのだ。画質がどうこうとかフリンジがどうこう言うのは野暮な話なのである。

 

しかし世の中には野暮な人間がいるものだ。しかも性格に難がある上にブログをやっている人もいるのだ。性格が悪いために

 ・最も画質に問題が起きやすい周辺部で

 ・フリンジが出やすい明度差が大きい雪の乗った

 ・描写がガサガサになりやすい葉の上にピントをあわせ

最新設計のSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAとロッコール50mmF1.7を容赦なく比較してしまうのだ。ボディはα7RでISO100固定。それにしても、48年前の安レンズに対して残酷な仕打ちである。当時の価格は2万円で、現在に換算すると4万円相当だろうか。すでに安レンズだったわけである。どうやったって勝ち目がない。本当はスペックがまったく同じであるSMCタクマー55mmF1.8と比較すべきなのだろうが、実はレンズの焦点距離というのは公称より何パーセントかのズレがあるし、まあこの辺はあまり厳密にする意味はないようだ。

 

 

まずSonnarの開放を見てみる。厳しく見ると雪の上にほんの少しフリンジが乗っているが、フルサイズ対応レンズの周辺の開放とは思えないほどよく解像している。

 

 

F8まで絞り込むとフリンジも消えロープの質感までわかるようになる。3600万画素のピクセル単位でもまだまだ余裕を感じさせる。

 

さて、今回はどこまで絞り込めばオールドレンズが現代のレンズに追い付くかの検証なので、55mmZAの開放とロッコールレンズを絞りを変えながら比較していくことにする。

 


ロッコール50mmの開放。はっきりいってちょっとひどい。雪の上に盛大にフリンジが乗っているしそもそも結像してない。こうしてはっきり見せられるといくらオールド単焦点レンズとはいえびっくりする。ピントがあってないんじゃないかと思って確認したがちゃんとあってる。フィルム時代ではこれでも許されたのである。いちおうロッコールの名誉のために言っておくが、中央の描写はずっとマシで、開放値はF1.7だからほんのちょっと明るいし、さらにいえば彼はマウントアダプターと一緒に4000円で売られていた48年前の発売当時ですらSonnarより安い老戦士である。どうやったって無理がある。むしろ写ってるのが葉だとわかるだけエライ。

 



2.8まで絞り込んだ。ロッコールの絞りリングはクリックがF1.7の次はF2.8なのだ。解像感はちょっとあがったがフリンジが目立つようになりかえって汚くなっている気がする。まだまだSonnarには遠く及ばない。

 

 


F4なので2段以上絞り込んでいるがまだまだ追い付いていない。フリンジは消えたので実用はこのあたりからだろう。

 

 

ここまでくると急激に改善してほとんど同等レベルになっている。雪の軌跡からシャッタースピードの違いを掴んでもらいたい。厳しく見ればまだSonnarのほうが綺麗に写っているが、焦点距離が5mm違うので実質同等とみても良いだろう。

 

 


F8まで絞ると画質はさらに向上する。ダブルガウスレンズの素晴らしいところは絞れば絞るほど急激に性能があがっていくところだ。まさにレンズ構成の主人公である。戦前から現代まで使われ続けているレンズ構成だけのことはある。フリンジまで考慮すると描写はSonnarの開放を追い抜いたといっていいと思う。

 

 


F8で比較する。まあ、Sonnarのほうが上だがロッコールだって負けていない。Sony FE 50mm F1.8とかCANON EF50mm F1.8も同様のダブルガウスであり、設計は大差ないので、似たような感じの描写になっていくと思われる。実際シャドーの落ち方などはよく似ていた。もっとも、コーティングが違うからロッコールとFE 50mm F1.8では逆光耐性はぜんぜん違うだろうが。

 

結論、F5.6くらいまで絞ればオールドレンズでも、高画素機で実用画質になる。老戦士侮るべからず。




カメラの機材は高い。我々はメーカーに洗脳されて感覚がマヒしている。レンズなんて言ってみれば石の塊なのだ。透明な石がおかしな並びで筒に収まってるだけだ。カメラ好きはそんな石の塊に信じられない金額を支払ってしまう。たとえば2つの製品があるとする。レンズAとレンズB…比較して…写りは同じでも、ほんのちょっとばかりオートフォーカスが早いという理由で、数万円高いレンズAを選んでしまう。カメラ好きは大概そういう人種なのだ。

 

でも高い機材を使うことが必ずしも良いとは限らない、ということもみんな知っている。でも具体的にどうすればいいのかよくわからない。僕も分からない。わざわざ安い機材を選んで使うことなど普通ないからだ。一度しかない(かもしれない)旅行で、好きこのんで安物を持っていくことは機会を捨てることになりかねないし、その恐怖におびえるくらいなら買い足すことを選ぶ。

 

しかし、人間は恐怖に打ち勝つことができる。恐怖を乗り越えること、それが人間賛歌なのだ。決してケチなのではない。人は可能な限り機材にお金を使わずにミラーレスシステムを組み、残ったお金で同人誌を買うことができる。恐怖に打ち勝ちたくてウズウズしている方々は以下をご覧あれ。

 

ヤフーオークションで落札したSony α-NEX-5である。電池蓋が閉まらないというどうしようもない理由でジャンク扱いされていた。2,000円。バッテリーを入れたら普通に動いた。蓋は糊でくっつけたがたまに開いてちょっと怖い。

 

MC Rokkor-PF 50mm F1.7とマウントアダプター。セットで4,000円だった。なぜこんなものを買ったのかよく覚えていないが、ヤフーオークションは時々、人によくわからない行動をさせる。オールドレンズだが光学系は良好で、ソニーαの前身がミノルタだったことを考えるとNEXに装着するのは正統的であるような気もする。

 

バッテリーとSDカードだ。実は他のカメラでおまけにつけてもらった予備バッテリーなので一銭も払っていないのだが、これを差し引くのはフェアではないのでバッテリーを1,500円、SDカードは1,000円にしておこう。

 

被写界深度がとれなかったが装着するとなかなか堂に入っている。フルサイズ換算で焦点距離75mmF1.7の中望遠単焦点レンズがついたカメラだ。とても8,500円とは思えない。いや…8500円にしか見えないような気もする。どっからどう見ても1万円はしなそうだ。ちなみにこれをフルサイズで再現(α7R3にFE 85mm F1.8を組み合わせる)すると40万円くらいになる。

 

実写した。

 

永平寺。レンズは普通のダブルガウス。開放はちょっとザワつく。

 

絞るとそんなにフリンジも目立たない。

 

水の表現も電池蓋が閉まらないカメラとは思えないほどよく締まっている。

 

永平寺はお坊さんさえ撮影しなければあとは自由に撮って良いという、とても太っ腹なお寺。

 

普通によく撮れていてコメントしづらい。

 

 

 

 

 

こういうのを現像していると、なぜ自分が機材にお金を使うのかよくわからなくなってくる。この撮影の帰りにキャッシュバックにつられて85,000円のSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAを買ったが、この写真の10倍よく写るとは到底思えない。まあ、なんでもいいのだ。我々は機材を買う理由さえ見つけられれば、満足して買ってしまうのである。どうせ困ったら売ればいいし…(沼に沈んでいく)。

 

 




カメラレンズにはあれやこれや名前がついている。テッサーとか、ズミクロンとか…。そしてウルトロン。Ultronというレンズ銘はもともとフォクトレンダー社が使っているものだ。しかしフォクトレンダーがCarl Zeissに買収されたあたりで事情が変わり、ほんの一時期だけ、Zeissの名を冠するUltronが作られている。そのあたりのすったもんだはグーグル検索してもらえば他の詳しい方が解説してくださっているので省略する。

 

Carl Zeiss Ultron 50/F1.8はスペックを見る限りごく平凡な標準レンズだ。前玉が凹形状をしているという点を除けば。この摩訶不思議な設計はバックフォーカスを確保して、一眼レフでもUltronを使えるようにするための突貫工事の結果のようである。もともとUltronはレンジファインダー用のレンズだ。日本メーカーのレフ機一大攻勢によってフォクトレンダーが追いつめられたため、とにかくZeissもさっさと一眼レフに対応しなければという焦りがそうさせたのだろう。レンズを再設計する時間がない。じゃあ前玉をへこませろ、という魔改造的発想。

 

 

 

この凹みウルトロンは中央の解像度が素晴らしく高く、いっぽうで周辺部はかなり柔らかい描写になる。M42のZeiss UltronをsdQで使用したが、テレセン性がないためかあるいは個体差のせいか、周辺の色ノイズがすごかった。しかしその一見して荒れた描写と、ピント面の素晴らしい画の落差が、魔法のように被写体を際立たせることに繋がっていると思う。

 

このレンズはズミクロンとまではいかないが結構人気がある。そういうのを集めて(2000円くらいのSMC Takumar 55mm f1.8とかマウントアダプター買ったらついてきたミノルタのレンズとかその他もろもろの標準レンズ)描写を比べてみたことがある。こういうことをやりたい人は結構いると思う。少々お金もかかるし、この沼に手を突っ込む前に僕の意見を参考にしていただければ――結論、標準レンズに駄作なし。