2017/08

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 DP2Merrill

 

・他社との比較

SIGMA社製のカメラが使用しているFOVEONセンサーと、他社製のカメラのベイヤーセンサーは根本的に作りが異なる。どちらがより優れているというわけではないが、基準感度による撮影ではFOVEONセンサーのほうが出てくる画はシャープだ。少なくともDP2Mが出た当時は、比較対象に中判カメラが挙げられるほどずば抜けて画質が良かった。しかしMerrillの時代とは違い、解像度の高いカメラはいまや無数にあり、SIGMAのカメラ=最高の解像度とは一概には言えなくなっている。

 

質感や階調性などを考えずどれだけ解像するかという単純な比較では、レンズにもよるが、おおむね他社製ローパスレス2400万画素を超えるカメラと互角だと思う。公式によればMerrillは4600万画素、Quattroは2900万画素を謳っている。個人の感覚なので誤りがある可能性を断っておくが、APS-Cのセンサーで比較すると2016年の世代であるX-Pro2やX-T2あたりと同等の力ではないだろうか。DP2Mが2012年の発売なので解像度的には4年近く先行していたことになる。

 

解像度以外の画質について、言葉にするのは難しいが、FOVEONセンサーから生み出される画は誠実で、ごまかしがないと感じる。他社のセンサーは、高周波な被写体をそれらしく見せるために省略したり、人工的な建造物をよりシャープに見せたり、巧妙なNR、再現性の高い発色をさらに強調することで綺麗に見せたりと、積極的に画を加工しているように見える。これらは良い写真を撮るための歓迎すべき技術のはずだが、FOVEONは可能な限りそれを回避しようと試みているようなふしがある。おかげで汚いものは汚いまま、しょうもない被写体はしょうもなく写る。

 

 

・MerrillとQuattroの比較

FOVEONセンサーは大まかにいえば、現行世代のQuattroと前世代のMerrillの2つに分かれており、これらは単純な解像度や高感度耐性とは別に、出力される画の特性が異なる。興味深いことに前の世代であるMerrillを好むユーザーも少なからずいる。

 

センサーの仕組みは置いておくとして、誤解を恐れずに言えば、Merrillのほうが世代が古いにも関わらず、解像度が高くノイズレスで高画質だ。ただし、自分が使う限りではQuattroよりMerrillのほうが、失敗写真になる確率はずっと高い。これは多くのユーザーに指摘されていることだが、手ブレや露出の失敗などの設定ミスではなく、単に変な写真になるのだ。傾向の話になるが、Merrillはコントラストが低い被写体だと、解像はしているのだがはっきりしない画になりがちで、たいていの場合、発色も転んで変になる。室内で人物を撮ると土人形みたいな色になるし、日陰で赤い物を撮ると蛍光塗料を塗ったように色が飽和する。光量が少なすぎても多すぎてもダメだ。とりわけMerrillのDRが狭いわけではないと思うが、明暗の激しい画像は、持ち上げても暗部がノイズだらけになって使い物にならない。

 

DP2Merrill (実物はこんな色ではなかった)

 

この弱点を解決するには、適切な被写体を選んで撮影する以外にない。体感だが、直射日光が当たらない晴れから明るい日陰の間、EV13〜14くらいの光量の被写体にレンズを向ければ、AWBも適切に働き、飽和もしにくく、シャープかつクリアで、絵画のように重厚で印象的な画像が得られる。また、彩度が低くグレースケールに近い被写体であれば色転びは気にする必要がないため、降雪した風景や霧なども得意分野だ。もちろんモノクロで撮ればなお素晴らしい結果になる。

 

DP2Merrill

 

DP2Merrill

 

Quattroはシビアな場所での撮影に関しては劇的に改善しており、色も正確で、軟調な写真も作れるようになっている。しかし基準感度による撮影でも暗部に若干のノイズが乗るようになっており、その部分ではMerrillと比較して後退している。発色はかなり傾向が異なり、なんとも表現しづらいので作例を見てもらうしかないが、どうやらQuattroのほうが「普通の写真」に近づいているようだ。

 

dp3Quattro

 

またQuattroにはSFDモードという連射合成機能があり、前述のノイズはこれによってほぼ解消される。これは基準感度で露出をずらしながら7連写する機能で、出力されるのはjpegではなくRawデータがそのまま7枚分集合したファイルである。それをSPPという専用の現像ソフトで合成する。手持ち撮影や動く被写体には使用不可能だが、現像ソフトのアップデートにより現在それなりに実用できる代物になっている。

 

dp3Quattro

 

総合的に見ると、個人としての感覚ではQuattroのほうが好ましい画を作るように思う(たまにMerrillが勝つ)。また専用現像ソフトであるSPPも、最も新しい世代であるQuattroで撮影されたRawに対して手厚く作られていて、今後も機能の追加や画質の改善などを目的に更新されていくだろう。一方Merrillで撮ったデータの現像についてはもう【終わって】おり、改善されることはないはずだ。

 

高感度耐性に関してはQuattroのほうが1段分ほど耐えるが、正直いって大差なく、どちらも基準感度で撮るカメラだ。

 

 

・sd Quattroとdp Quattroの比較 

sdQはレンズ交換式であるため、Artラインの大口径レンズを使用できる。これらのレンズは主に開放値F1.4でありながら非常に高画質で、dpに据え付けられたレンズと比較すると2段分明るく、コントラストがとても高く、色も鮮やかだ。とはいえ大口径を実現するため十数枚のガラスの塊が使われており、単焦点レンズでも1本で1キロ前後の重量がある。手持ちで撮影する分には腕を鍛えればいいが、三脚を使用する場合は荷重限度により撮影に制限が生まれる。また大口径レンズの宿命としてフリンジが発生しやすく、気になるのならば修正が必須となる。もっとも換算21mmより広い超広角や、90mmを超える望遠レンズを使いたいのなら、sdQないしsdQH以外の選択肢はない。

 

sd Quattro

 

dpQはレンズ固定であり開放値F2.8と控えめだが、そのおかげでレンズ性能に無理がなく、各種収差はほとんど発生しない。dpではSPPの倍率色収差補正のチェックをつける必要性を感じない。もっといえば、jpegでも良い。記事冒頭の写真は、dp2Qと同じレンズであるDP2Mで撮影したが、jpegで保存したデータで無加工だ。ぜんぜん問題ない。DP2Mとdp2Q、DP3Mとdp3Qは世代が異なるにも関わらず同じレンズを使っている。理由は単純で性能がすこぶる良いからだ。DP3のレンズはその中でもベストの性能で、解像力は極めて高く、設計上8000万画素まで耐えられるという。

 

dp3Quattro

 

結局のところ、単焦点レンズを装着してF2.8以上に絞り込む使い方をする限りは、sdもdpもあまり変わらないことになる。また発売当初はsdQのみに搭載されていたSFDモードが、dp Quattroにもファームアップで搭載されたため、そこまで考慮するならいまのところ画質についてはdpが最も良好だ。dpはレンズシャッターであるため、SFD合成の障害となるレリーズ時のショックがほとんど無いこと、本体重量が500gを切るので三脚への負担が小さいことがその理由である。

 

前述の通り、SFDモードで撮影された写真の画質、とくにノイズのクリアさとDRは驚異的で、やたら軟調な画になるという特徴もあるが現像の自由度は極めて高い。ただしその代償として、ファイルサイズがなんと400MB以上になってしまう。動画ではない。写真1枚でだ。

 

 

・画質以外のこと

ここまで使い勝手のことに対して一切言及しなかった。これには理由がある。

 

SIGMAのカメラはとにかく「扱いにくい」「わかりにくい」「聖人のような忍耐力が必要」といったたぐいの言葉で装飾される。SIGMAが売るカメラはひたすら使い勝手がよくなく画質だけは素晴らしいというのが通説だ。はっきり言っておくが、これは記事のウケを重視しユニークアクセスを呼び込むためのいささか過剰な表現だ。他のどのカメラとも同様に、SIGMAのカメラもシャッターを切ればちゃんと写る(写らなかったら困る)。AFは正確で、画質は言うまでもなく、非常に良い。dpに限って言えば、jpegでも十分な画質を得られる。Raw現像が必須というのは誤りだ。また現像ソフトであるSPPはバギーで動作が遅くすぐ固まりしかも使いにくいなどと酷評されるため、二の足を踏む人も多いだろうが、それは古い情報で、何度もアップデートされた今、使ってみるとそれなりによくできたソフトだと感じる。

 

思うに本当にSIGMAのカメラが、いわれるように使いづらい代物だったら、僕はこんなに長文をかいていない。カメラとして使いやすいからこそ、多くのファンを生み出した。SIGMAにはない要素、たとえばものすごく高速なAFとか、手持ちでもブレない写真が撮れるとか、電池が長持ちとか、液晶画面が見やすいとか、そういった他社に当たり前にある要素は、鳥やスポーツ選手を撮るような従来は専門家がやっていた特殊な撮影をやりやすくするための、どちらかといえば付加的なものだ。現代のカメラは非常に高機能で、そういった非日常的撮影ができて当たり前になっているが、ごく一般的なアマチュアがスナップや風景の撮影に扱う「普通の」カメラとしての使い勝手というのは、別なところにあると思う。

 

バッテリーを3つも4つも持ち運ぶのは、個人的にはたいして不便ではない。不便を感じる瞬間とは、労が報われないと感じるときだが、FOVEONはしっかりと準備すれば必ずそれに相応しい成果をくれる。

 

「使いやすい」高機能なカメラには時々、変なところに動画撮影開始ボタンがついていたり、使いもしないアートフィルターがダイヤルに割り当てられたりしている。迷路のように複雑なメニューもそうだ。そういうスチルカメラとして余計なものは、sdやdpには一切ついていない。逆に必要なものは全部ある。カメラに必要なものは、使い手がそれを信じられるか否かという信頼だ。SIGMAのカメラは信頼に値する。