2018/09

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・ローパスレス高画素機とFOVEONセンサーの解像力の差

ベイヤーセンサーとフォビオンセンサーの絵について、どちらが上かという不毛な議論や検証は絶え間なく続いてきた。このセンサーの違いについて、真剣に考えている人はたぶん、ほとんどいないだろうが――カメラから出てくる絵に撮影者が満足していれば、どちらであろうと構わないではないか――ここ半年ほどベイヤ―高画素機を一通り使ってみて、その違いについて、あえて書いておきたいと思う。

 

フォビオンで特筆される「解像度の高さ」はいまや周知のことだ。積層型センサーは極めて高い分離能力を持つ。しかし、他社の高画素カメラもまた素晴らしい画質を持っている。どちらも良いのは大前提の話としても、高解像度カメラ好きとしては「ローパスレスベイヤー高画素機(α7R3、D850)」と「フォビオンの最高画質機(sd Quattro H)」のどちらが最高の解像度を持つのか、やはり気になってしまうものだ。

 

まず、単純に画質サイト(https://www.dpreview.com/reviews/image-comparison?)でどこまで解像しているか比較してみる。

 

 

繰り返しになるが、このような解像度の比較は好奇心を満たす以上の意味合いはあまりない。

 

sd Quattro Hのトップ層は2,550万画素で、レンズは50mmArtを使用している。そのままjpegで出力すると、ベイヤー高画素機と画像サイズがあわなくなってしまうので、High res現像した画像を使う。これはS-HI出力のことであろう。FOVEONのrawデータを引き伸ばした絵になるわけだが、他機種の単純な拡大現像と違い、通常サイズの現像よりも明らかに解像度が高まるので、これを使用するのが最も解像力の高い出力方法ということになる。

 

 

sd Quattro Hの線の分解能力を見る。42MP-43MPの中間あたりまで、9本はっきり描写されていることがわかる。そこから先は8本にくっついてしまっているが、レンズの素晴らしい色収差補正力もあいまって、驚異的な分解能力を示している。5,100万画素相当の超高画質センサーの面目躍如である。

 

次にα7R3を検証する。有効画素数は約4240万画素で、解像度を最大限に高めるピクセルシフトを使用する。使用レンズはFE85mmF1.8のようだ。

 

 

FE85mmF1.8は色収差が補正しきれておらず、かなり滲んだ絵になってしまっている。それを差し引いても、46MPあたりまでは9本分離しているように見える。この辺りは個人個人で許容限度が違うだろうが、現在市場にあるカメラの中で(中判を除けば)トップクラスの、素晴らしい解像度であることに誰もが異論はないだろう。

 

検証結果をまとめると

 ・sd Quattro Hは約43MPの解像力があり、滲みも少ない。

 ・α7R3は約46MPの解像力があるが、若干の滲みがある。

 

この結果を見ると、ベイヤー高画素機とフォビオンはほとんど互角の解像度性能を持っていることになる。……という結論にしたいのだが、実をいうと、これは明らかにフォビオンに有利な検証方法だ。理由は次の画像を見て貰えばわかる。

 

 

sd Quattro H(右側)は斜め線を描写できず、モアレが発生してしまっている。線がジャギーを起こしている。

 

これはセンサーの仕組みを起因とする問題ではなく、単純にsd Quattro Hのトップ画素数が少ないがゆえの現象だ。フォビオンセンサーは「隣り合う線と線が分離している」ことは、トップ画素数をはるかに超える鮮明さで、極めてはっきりと認識できるが、「分離した線がどこに配置されているか」はトップ画素数以上のことはわからない。

 

したがって、直線の描写(ビルなど)は有利でも、それ以外の描写では高画素ベイヤー機に対しては、比較してかなり厳しくなってしまう。比較法を変えることで、この差を見かけ上縮めることはできるが(たとえば、α7R3の画像をsd Quattro Hの通常出力の画像サイズと同じに縮小した上で、解像度ではなく解像感を比較するとか)、それはベイヤー高画素機のトリミング耐性をオミットする行為だ。

 

この差を克服するには、さらなる高画素フォビオン機が必要になってくる。将来のフルサイズフォビオン機がその役割を担っているのだろう。しかし、はっきり言って、現段階において、僕にとってフォビオンの魅力は解像度ではない。高い解像度を持っていることは確かだが、さまざまな弱点を抱えてまで、あえて究極の解像度を求めるのなら、高画素ベイヤー機を選ぶという選択肢も検討するべきである。

 

 

・FOVEONの魅力

次の比較画像を見て頂きたい。

 

 

左側がα7R2に、Eマウントで最も解像度が高い単焦点レンズのひとつであるZEISS 55mmをつけて撮影したものだ。右側はsd Quattro(Hではない)に、17-50mmF2.8(2万円以下のズームレンズ)をつけて撮影したものである。

 

これは性能比較ではなく、フォビオンの特性を見るための比較なので、sd Quattroにとって圧倒的に不利な条件で並べられている。

見てわかる通り、圧倒的にα7R2のほうが解像度は上だ。赤いペイントがピクセル単位まで明確に分離していることがわかる。

 

もうちょっと拡大してみてほしい。

 

 

よくよく比較してみると、sd Quattroは、α7R2で拾っていない、細かい凹凸が強調されて描写されている。これがフォビオンの特性である。

フォビオンの画質には独特な空気感や立体感、実在感のようなものを感じる人が少なからずいる。マイクロコントラストの強調がその正体である。明らかに画素数でも解像度でも劣っているにも関わらず、一見してノイズに見える粒子を含めて、ざらざらとした質感を感じさせる描写をする、フィルム写真のような描写力こそフォビオンの魅力なのだ。

 

実は、αでもこれに近づけることはできる。現像でストラクチャーを振り、マイクロコントラストを高めればよい。

 

 

素材感は高まった。が、シャープネスが効きすぎてギトギトになってしまう。

 

このバランスがほとんど自動的に、完全に近い形でコントロールされているのがフォビオン機なのだ。

 

書き忘れたが、フォビオンは色も素晴らしい!

 

実をいうと、ここ半年ほど我が家からクアトロセンサー機が消えていた(――あんなにフォビオンをヨイショする記事を書いておきながら…――)理由は単純で、α機を試してみたかったのだ。それで家にフォビオン機があると使ってしまうし、資金の用意も難しかったので、売ってしまった。sd Quattroは世界一クールなカメラ、と思っていたにもかかわらず、だ。

 

まず悪名高き初代α7Rを試した。世間の「ブレる、うるさい、使いづらい、遅い」という評判に対して、個人的な使用感は悪くなかった。シグマのカメラを使っていた自分にとって、α7Rはまるでマンツーマンの担当者つきのカメラ教室のように感じた。高感度は使えなくもないし、EVFはグラグラしてないし、書き込み速度はsdQが徒歩だとすると新幹線並みだ。低感度画質も思っていたよりずっと良くて、気に入った。しばらく使ううちに、電子先幕シャッターが欲しくなり今度はα7R2に買い換えた。その際にレンズシステムを構築するため、dp Quattroも質に入れてしまった。

 

半年の時間が流れ、α7R2には大いに満足した。ダイナミックレンジも解像度も良好だし、手ブレ補正は実用的で、レンズは軽くて高性能でAFも早い。ポートレートをやらない自分には瞳AFの精度は要らないので、R3にする必要性は感じない。要するに、どこをとっても非の打ちどころがない、優れたカメラだ。

 

そして僕は、αを売ることなく、またsd Quattroを買い直した。

 

あえて繰り返そう、sd Quattroは、世界一クールなカメラだ!


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