2019/10

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ボディキャップレンズというものがある。マウント面に保護用につけるキャップの中央にレンズをはめ込んだ「撮れるボディキャップ」というやつで、オリンパスがマクロフォーサーズマウントで2種類(換算30mmと19mm)、富士フイルムもXマウントでフィルター回せるやつが1つ、ペンタックスもシールドレンズだかをQで出していた。メーカー内では「交換レンズ」というよりも、いわゆるトイレンズ、ロットNo等もないアクセサリとして売られている。そういえば、一時期キャンペーンのおまけで本体を買うと、安い方の「BCL-1580」がタダでついてくるパターンがよくあった。

 

 ●BCL-1580

 

自分の話をさせてもらうと、はじめて買ったレンズ交換式カメラがE-PL6のダブルズームレンズキットだった。で、そのE-PL6を買った時にカメラ屋のお姉さんがおまけでBCL-1580をつけてくれて、こりゃありがたいと思ってもらったはいいものの、そのまんま使い道もなく埃をかぶっていた。たぶんPENを買った人の大多数はそうやってキタムラのお姉さんから手に入れ、一回使うか使わないかして防湿庫行きになっているんじゃなかろうか。だって初心者には使い方意味わからんないから。AFもないし絞りリングもないし電子接点もないし…。

 

E-PM2+BCL-1580

 

まーとにかくコンパクトではある。BCL-1580は換算30mm、F8固定の超パンケーキ(というか、もはやクッキー並みの厚みだ)厚さ8mm、20グラムちょいしかない。でもあえてこれを使うことがあるか? もう数ミリ厚くてよければ、電子接点があり絞りがありAFが効くまともなパンケーキレンズがマイクロフォーサーズにはすでにある。そんなわけで、結局使いどころがないのだ。でも今回はあえてそれを掘り出して使ってみた。

 

上のがその作例だが、見ての通り割と、いやかなりまともな写りをする。ペンタックスのボディキャップレンズは冗談みたいな画質のトイレンズなのだが、オリンパスのほうは相当しゃんとした発色で、逆光耐性も強く、シャープネスも充分ある。さすが胃カメラとか作ってる光学メーカーだ。別にこんなもん適当に作ったって誰も文句いわないはずなのに滅茶苦茶しっかり作られてる。設計した人はきっと冗談が通じない堅物なのだろう(褒めてます)。


 

E-PM2+BCL-1580

 

小型化の反動として光学的な弱点はもちろんあり、四隅の解像度がかなり悪い。というか、像面湾曲のせいで無限遠にしても四隅のピントが合わない。四隅をジャスピンにするには無限遠マークよりちょっと先に動かす必要があるが、そうするとこんどは中央のピントが合わず、絞り機構がないので被写界深度を深くすることもできないので、まあどうしようもない。ま仮に隅にピントがあったところでちゃんと解像するわけではないのだが。

 

E-PM2+BCL-1580(2倍デジタルテレコン)

 

ならばいっそデジタルテレコンを使って四隅を捨ててしまったらどうだろう。E-PM2などに搭載されているオリンパスのデジタルテレコンは、中央を拡大しつつ画素補完を行ってくれるので、見かけ上の画面全体の画質一貫性は高まる。さらに中央だけ使うので、素で使うより歪曲も目立たなくなる。そんなわけで、光量が充分あるなら、換算60mmF16として使うこのスタイルも推奨したい。

 

E-PM2+BCL-1580(2倍デジタルテレコン)

 

 

E-PM2+BCL-1580

 

 

E-PM2+BCL-1580

 

このレンズは基本、無限遠指定のパンフォーカスで使うことを想定されているのだが(そういうスナップレンズだと思う)、それでも15mmF8ではまだまだ被写界深度が狭いので、結局近いものを撮る場合はピント合わせが必要になってくる。でもこのレンズのピントレバーではそれが異様に難しい。説明が難しいのだが、なんか全体的にアクションゲーム感がある。ともかくBCL-1980をまともに使うなら、ファインダーは必須だと思う。でもE-M1とかにこのレンズをつけるのも主客逆転感が…。PENにこのレンズと外付けファインダーを取り付けて使うのがマッチすると思う。

 

E-PM2+BCL-1580

 

E-PM2+BCL-1580

 

E-PM2+BCL-1580

 

とにかく色が素晴らしい。レンズの小ささからは信じられないような描写力だ。構成3枚で枚数少ないのがいいのかな。

 

おまけでフルサイズのα7S+Loxia50/2(を60mm換算にトリミングした画像)との比較写真もどうぞ。

 

 

 

どっちがどっちかわかるかな。まあ、ノイズに注目すればわかるか。さすがにね。

 

 

 ●BCL-0980

 

こっちは換算18mmの魚眼レンズだ。冒頭写真の右側の黒いヤツで、自分はEマウントAPS-C用にイメージサークルを広げる改造をしてしまったのであんな感じになっている。写りは定評があり安い魚眼レンズとして評判がいい。被写界深度もBCL-1580よりずっと深いのでほぼピントあわせで困ることはない。確かに良いのだけど、いかんせん何を撮ってもいたずらにオモシロになってしまうので難しい。一応、歪曲補正をガチガチにかければ普通の超広角レンズとしても使えるらしい。

 

E-PM2+BCL-0980

 

E-PM2+BCL-0980

 

E-PM2+BCL-0980

 

E-PM2+BCL-0980

 

E-PM2+BCL-0980

 

逆光耐性はまあ、あんまりない。うーん一回バラしちゃったせいかな。でもこれくらいなら味としてあってもいいかも。

 

ところで、この2枚のボディキャップレンズを使っていると、オリンパス技術者の魂の叫びみたいなものが聞こえてくる気がする。いわく…

 

『どうだ、この画質と小型化の両立は!すごいだろう、これだけ小型化してもマイクロフォーサーズなら必要十分な画質を保てるんだ!レンズ交換式デジタルカメラシステムの最適解が、フルサイズでもAPS-Cでもなく、≪マイクロフォーサーズ≫なのが、これでキミにもわかっただろう!』…っていう。

 

まさにこの2枚のボディキャップレンズは、マイクロフォーサーズの理論上の正しさを証明するアイテムなのだ。

 

 

E-PM2+BCL-1580

 

はっきりいって、実際そうだ。僕の用途では、この2枚のクッキーみたいなレンズとE-PM2ですべてが充分事足りる。それは頭ではわかっている。

 

でも、マイクロフォーサーズの『問題』はたぶんそこにある。我々が「写真機」に求める画質の99%は、いやひょっとしたら100%が、きっとマイクロフォーサーズセンサーとレンズでカバーできる。そして、その必要画質におけるレンズやボディとのサイズバランスは、きっとマイクロフォーサーズがベストなのだ。それは理論から導き出された真実なんだろう。

 

だけど、自分で「これこれこの性能が、私が求める必要画質である」と自覚できる人が、いったいどれだけいるのだろう? 頭ではわかっていても、確信できるだろうか? プロカメラマンの人は、仕事ならこのレベル、という画質に自覚的な人がいるのだろうが、ハイアマチュアとかカメラ初心者の人には、ほとんどそれはわからないと思う。僕もそうなのだけど、ただ単に「撮りたいシーンで後悔したくない」という理由で、より大きく、重い機材を欲してしまうのだ。それはシステムとの完成度とは全然関係なく、失敗写真への恐怖。いってみれば、安心のため。心が弱いだけなのだ。

 

ボディキャップレンズで充分。たぶんそうなのだ。でも、それだけで旅には出られない。もっといい機材を持って行きたい欲求に抗えない。マイクロフォーサーズはその心の揺らぎの真上に立っている。足るを知るというのは難しい。自分に必要な「画質」を、多くのユーザーがはっきり自覚できた時にこそ、マイクロフォーサーズは本当の意味で完成するのだろう。そしてその時まで、我々は安心できる機材(つまりフルサイズFOVEON)を求めて、悩み、のたうちまわるのである。


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