2018/08

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「カラーで人間を撮影すると、着ている服装が写る。しかし、モノクロで人間を撮影すると、心の内面が写る」(モノクロ写真の魅力とは

 

 


モノクロームには集中させる力がある。白黒のコントラストはカラーと違って過度な彩度にならず嫌味がない。階調も色を気にする必要がないのでコントロールしやすい。ボケや収差と同じように、これらを利用して、撮影者の意図をダイレクトに、見るものへ伝えることができる。実際にやるとなると難しいが。


モノクロ写真の被写体としてとくに人物が選ばれるのは、作図として意図が明確になりやすいことと、それに伴うノイズがあまりに多すぎるためだろう。人は無意識に自己の内面をノイズで隠そうとする。服、表情、ポーズ…カラー。モノクロームはそのときノイズリダクションの役割を果たす。


いまだに多くの漫画がモノトーンで描かれるのも、作業コストの削減や印刷費の問題とは別に、白黒のコントラストで意図を明確にすること、それに伴って読者に感情移入を促すという効果を期待しているのではないか。





OLYMPUS AIR A01+LUMIX G 14mm/F2.5 ASPH

 

2013年末から2015年ごろにかけて、レンズスタイルカメラという製品がソニー・オリンパスの二社から相次いで発売された。見ての通りモニターを持たず円柱状の「レンズのみ」の製品で、撮影の自由度とコンパクトさが売りの製品だ。モニターがなくてどうやって撮影するのかというと、これはスマートフォンとレンズスタイルカメラでwi-fi通信することで、スマホをモニター代わりにする。

 

ガジェット好きを中心に当時、結構話題になった。ソニーからは

 ILCE-QX1

 DSC-QX100

 DSC-QX30

 DSC-QX10

の4種が先んじて市場に投げ込まれた。そして2018年現在、後継機種は発売されていない。その事実から分かる通り、この手のレンズスタイル・カメラは結論からいうと失敗作、商業的にはよくわからない立ち位置になっている。ハード面、ソフト面でもそれぞれ理由はいろいろあるのだが、苦労してスマホをくっつけて通信を確立してもできあがるのが「撮影ラグが長くてなんか使いにくいカメラ」でしかない、というのが最大の理由だろうか。

 

またコンパクトさが売りなのに、レンズスタイルに固執するあまりセンサーや処理チップ部分を円柱に収めるべく奥行きがでかくなってしまい、「別にそれほどコンパクトじゃない」というジレンマを抱えてしまったのもある。とくに親玉のILCE-QX1はレンズ交換式にも関わらず本体だけで幅74.0mm奥行52.5mmもあり、下手したらNEXのほうがコンパクトなんじゃないかと思わんでもない設計ではある。

 

 

このようなレンズ・スタイルカメラのなかで最も後発で洗練されていたのが表題のOLYMPUS AIR A01である。こいつはマイクロフォーサーズマウントのレンズ交換式のレンズ・スタイルカメラで、ソニー製品に比べコンパクトになっている。

 

また、このカメラはジャンルを『オープンプラットフォームカメラ』と称し、スマホを連結するアダプターの寸法や、ソフトウェアのAPIをすべて公開して自由に作ることができるというのも話題になった。オリンパスは最小限のアプリを提供し、有志が自由に拡張できるという、極めて先進的な思想のもと送り出された。

が、このカメラもはっきりいって珍カメラだ。

 

オープンプラットフォームは先進的というより丸投げに近く、もともとあってしかるべき光学系のアクセサリーは素人にはどうやっても作れないのが問題で、これだけコンパクトなのに単体で撮影できないのが非常にもったいない。せめて折りたたみ式光学ファインダーくらい最初から用意していれば。あるいはホットシューがあるだけでもだいぶ違っただろうに。

 

もちろん、オリンパスエアー単体で撮影できるようにグリップを3Dプリンタで作って装着したり、簡易ファインダーをつけたり、いろいろ使いやすいようにアレンジすることもできる…。それは楽しいと思う…、可能なのだが…しかしそうして出来上がるのは、単にかさばるモニターのない使いづらいカメラなのだ…。なら最初からモニターがついた普通のカメラの方が良い。

 

 

だが、オリンパスAirには何よりも代えがたい美点がある。それは、軽いこと。なんとレンズ(LUMIX G 14mm/F2.5 ASPH)を装着し、撮影可能な状態で(後部のアダプターを外せば)200gを切る。これは本当にすごい。センサーが二回り小さい世界最小を自称するPENTAX Q10の本体のみより軽い。OM時代から連なるオリンパスの小型化への執念、というか、ここまでくると強迫観念であろうか。

 

 

これだけ軽いとgoProマウントに変換して、長い長い自撮り棒の先端につけてもまったく問題なく、遠隔操作で写る。

 

そう、こいつは3メートルの高さから撮影できるのだ。マイクロフォーサーズの画質で。

 

 

3メートルの高さから見下ろす広角の世界は、ちょっとしたドローンのような絵になってしまう。崖だろうが橋の下だろうが、手+自撮り棒の届く範囲であれば撮影にほとんど制限がない。

 

 

 

御柱の全景が入ってしまう。

 

 

 

これでしか撮れない画がある、というのは良いカメラの条件だと思うが、うーん。そう考えるとオリンパスAirは傑作機といってしまっていいような気もする。言い過ぎかな。

 

追記:

この手のカメラはいま絶滅してしまったが、その血脈はたぶんアクションカムになるのだろう。モニターを同時販売して撮影時に分離させたり、防水加工を施したり…。DSC-RX0などはまさに「この小さいやつにモニターがあったらよかった」という要求にそのまま答えた、レンズ・スタイルカメラの血筋のような感じがする。


MINOLTA MD 300mm f4.5(SRマウント)

 

今ではなくなってしまったカメラメーカーのひとつにミノルタカメラがある。一時期は業界の覇権を握ったメーカーだったが、なんやかんやあってコニカミノルタになり、その後ソニーへカメラ部門を売却してフィルムカメラから撤退してしまった。そういうわけで、ミノルタのレンズは膨大な球数があるが使い出がなく、リサイクルショップのジャンク棚の常連になっている。個人的にジャンクレンズで最も多く見るのがPENTAXタクマー、その次がミノルタという印象で、まあどの店にもある。ただややこしいことにミノルタ製カメラ・レンズは時機によって名称や互換性が異なり、店のガラス棚に「ミノルタレンズ」と書かれて鎮座されているものが何なのか素人目にはよくわからんのである。

 

ちょっとまとめてみよう。

 ボディ:レンズ銘

で以下のような組み合わせで使用できる。

 

 SRマウント:AUTO ROKKOR、MC ROKKOR、MD ROKKOR、New MD

   ↕互換性なし

 ミノルタAマウント:MINOLTA AF

   ↕互換性あり

 ソニーAマウント:いろいろ

   ↕マウントアダプター使用で互換性あり。ただしEマウントレンズはAマウントにつけられない。

 ソニーEマウント:いろいろ

    ↑フランジバックが短いためマウントアダプターで上のすべてが使用可能

 

要約すると、どのレンズを使ってもソニーのαやNEXで使う分にはとくだん問題ない。今回はα7Rで使う。それにしてもミノルタAとソニーAの互換を切らなかったソニーは良心的だ。それだけミノルタのシステムが先進的だったということかもしれないが。

 

α7R+MINOLTA MD 300mm

 

件のMINOLTA MD 300mmの作例とポイントをいくつか。

 

開放値F4.5だが、絞り開放ではちょっと使えない。フリンジがかなり厳しく、コントラストも低い。F8まで絞ってなんとか許容範囲。F11まで絞りたい。300mmの長玉だが周辺がかなりユルく、中央もそれほど解像しないが、近距離〜中距離を撮る限りは滲みというより柔らかい感じで、雰囲気といってもいいか。周辺減光は感じない。

 

α7R+MINOLTA MD 300mm

 

少し離れるとこんな感じ。

 

レンズの作り自体は堅実で気合いがはいっており、インナーズームで取り回しがよく、フードが内蔵されていて使いやすい。ピント合わせも快適(ピントがどこにきてるのかはMFアシスト使ってもよくわからないけど)重さはマウントアダプター込みで834g。簡易三脚だと傾くかも。参考までにタクマー300mmF4が1kg超え。そのへんを考えると軽いレンズである。

 

α7R+MINOLTA MD 300mm

 

いちばんよく撮れたショット。

 

悪趣味だけど当倍に拡大する。

 

 

意外にもしゃんと解像していて驚く。というかかなり良い。質感もまあまあだし、階調も色も良い。

 

ただこれはピーカンで撮った時の話で、少しでも暗くなるとやはり何ともいえない滲んだ絵だ。分解能の限界なのだろうか。三脚+基準感度の撮影でもはっきりしない。やはり明るいところ専用だろう。こいつは300mmとしては結構小型なのでぜひ手持ちで撮りたいが、実用絞りがF8以降なのでSSを確保するとかなりISO感度があがってしまう。

 

手ブレ補正がない高画素機のα7Rで使うと、SSを1/800にしてもまだブレる。ちょっとでも日陰になるとすぐにISOが上限に。うーん、快晴で鳥を撮る以外の使い道が思いつかない。ただその用途に限っていえば、良いと思う。いろいろ考えてみると、あまりブレが気にならない画素数で、なおかつボディ内手ブレ補正もあるα7兇このレンズに一番マッチする気がする。その組み合わせなら、たぶん、手軽な望遠システムになるだろう。

 

一時期覇権を取りながら敗退したMINOLTAのレンズが、いまやミラーレスの覇権をとりつつあるソニー機で復活するというのは、皮肉というかなにやら言い表せない巡り合わせを感じるところである。



 

オールドレンズというのはフィルム時代に設計されたレンズで、これを現代のミラーレス一眼につけて遊ぶのが一部の人の界隈で流行っている。オートフォーカスも使えないし、絞りも自分で変えなければいけないが、それでもレンズを操る感覚が楽しいといわれ、ミラーレスカメラのソニーαシリーズや富士フイルムXシリーズの人気を押し上げる一因になった。これが流行った理由はいろいろあるだろうが、最大の要因は単にレンズの価格がめちゃくちゃ安いことだろう。

 

記事冒頭に挙げた2個のレンズは明るさも焦点距離もほとんど変わらないのに40倍近い価格差がある。左がSonnar、右がロッコールだ。今回使うのはミノルタのオールドレンズだが、これ以外にもニッコールとかタクマーの単焦点標準レンズは、現代のズームレンズより画質が高く、明るくて桁違いに安いので人気である。状態がそこそこ良くても2000円とか4000円くらいで手に入る。プレミアがついているズミクロンとか凹みウルトロンですら現代のレンズに比べればまだまだ安い。

 

もちろん設計が古いぶん現代のレンズとは差はある…コーティングが古かったり、周辺部の結像が緩かったり…。しかし絞り込むことである程度はそれは解消されるといわれている。が、具体的にどの程度差があるのかはあんまり検証されていない。たぶん、する意味がないからだろう。オールドレンズを使うのはそのユルさを味として楽しむためなのだ。大人の粋な遊びなのだ。画質がどうこうとかフリンジがどうこう言うのは野暮な話なのである。

 

しかし世の中には野暮な人間がいるものだ。しかも性格に難がある上にブログをやっている人もいるのだ。性格が悪いために

 ・最も画質に問題が起きやすい周辺部で

 ・フリンジが出やすい明度差が大きい雪の乗った

 ・描写がガサガサになりやすい葉の上にピントをあわせ

最新設計のSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAとロッコール50mmF1.7を容赦なく比較してしまうのだ。ボディはα7RでISO100固定。それにしても、48年前の安レンズに対して残酷な仕打ちである。当時の価格は2万円で、現在に換算すると4万円相当だろうか。すでに安レンズだったわけである。どうやったって勝ち目がない。本当はスペックがまったく同じであるSMCタクマー55mmF1.8と比較すべきなのだろうが、実はレンズの焦点距離というのは公称より何パーセントかのズレがあるし、まあこの辺はあまり厳密にする意味はないようだ。

 

 

まずSonnarの開放を見てみる。厳しく見ると雪の上にほんの少しフリンジが乗っているが、フルサイズ対応レンズの周辺の開放とは思えないほどよく解像している。

 

 

F8まで絞り込むとフリンジも消えロープの質感までわかるようになる。3600万画素のピクセル単位でもまだまだ余裕を感じさせる。

 

さて、今回はどこまで絞り込めばオールドレンズが現代のレンズに追い付くかの検証なので、55mmZAの開放とロッコールレンズを絞りを変えながら比較していくことにする。

 


ロッコール50mmの開放。はっきりいってちょっとひどい。雪の上に盛大にフリンジが乗っているしそもそも結像してない。こうしてはっきり見せられるといくらオールド単焦点レンズとはいえびっくりする。ピントがあってないんじゃないかと思って確認したがちゃんとあってる。フィルム時代ではこれでも許されたのである。いちおうロッコールの名誉のために言っておくが、中央の描写はずっとマシで、開放値はF1.7だからほんのちょっと明るいし、さらにいえば彼はマウントアダプターと一緒に4000円で売られていた48年前の発売当時ですらSonnarより安い老戦士である。どうやったって無理がある。むしろ写ってるのが葉だとわかるだけエライ。

 



2.8まで絞り込んだ。ロッコールの絞りリングはクリックがF1.7の次はF2.8なのだ。解像感はちょっとあがったがフリンジが目立つようになりかえって汚くなっている気がする。まだまだSonnarには遠く及ばない。

 

 


F4なので2段以上絞り込んでいるがまだまだ追い付いていない。フリンジは消えたので実用はこのあたりからだろう。

 

 

ここまでくると急激に改善してほとんど同等レベルになっている。雪の軌跡からシャッタースピードの違いを掴んでもらいたい。厳しく見ればまだSonnarのほうが綺麗に写っているが、焦点距離が5mm違うので実質同等とみても良いだろう。

 

 


F8まで絞ると画質はさらに向上する。ダブルガウスレンズの素晴らしいところは絞れば絞るほど急激に性能があがっていくところだ。まさにレンズ構成の主人公である。戦前から現代まで使われ続けているレンズ構成だけのことはある。フリンジまで考慮すると描写はSonnarの開放を追い抜いたといっていいと思う。

 

 


F8で比較する。まあ、Sonnarのほうが上だがロッコールだって負けていない。Sony FE 50mm F1.8とかCANON EF50mm F1.8も同様のダブルガウスであり、設計は大差ないので、似たような感じの描写になっていくと思われる。実際シャドーの落ち方などはよく似ていた。もっとも、コーティングが違うからロッコールとFE 50mm F1.8では逆光耐性はぜんぜん違うだろうが。

 

結論、F5.6くらいまで絞ればオールドレンズでも、高画素機で実用画質になる。老戦士侮るべからず。