2018/11

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カメラの機材は高い。我々はメーカーに洗脳されて感覚がマヒしている。レンズなんて言ってみれば石の塊なのだ。透明な石がおかしな並びで筒に収まってるだけだ。カメラ好きはそんな石の塊に信じられない金額を支払ってしまう。たとえば2つの製品があるとする。レンズAとレンズB…比較して…写りは同じでも、ほんのちょっとばかりオートフォーカスが早いという理由で、数万円高いレンズAを選んでしまう。カメラ好きは大概そういう人種なのだ。

 

でも高い機材を使うことが必ずしも良いとは限らない、ということもみんな知っている。でも具体的にどうすればいいのかよくわからない。僕も分からない。わざわざ安い機材を選んで使うことなど普通ないからだ。一度しかない(かもしれない)旅行で、好きこのんで安物を持っていくことは機会を捨てることになりかねないし、その恐怖におびえるくらいなら買い足すことを選ぶ。

 

しかし、人間は恐怖に打ち勝つことができる。恐怖を乗り越えること、それが人間賛歌なのだ。決してケチなのではない。人は可能な限り機材にお金を使わずにミラーレスシステムを組み、残ったお金で同人誌を買うことができる。恐怖に打ち勝ちたくてウズウズしている方々は以下をご覧あれ。

 

ヤフーオークションで落札したSony α-NEX-5である。電池蓋が閉まらないというどうしようもない理由でジャンク扱いされていた。2,000円。バッテリーを入れたら普通に動いた。蓋は糊でくっつけたがたまに開いてちょっと怖い。

 

MC Rokkor-PF 50mm F1.7とマウントアダプター。セットで4,000円だった。なぜこんなものを買ったのかよく覚えていないが、ヤフーオークションは時々、人によくわからない行動をさせる。オールドレンズだが光学系は良好で、ソニーαの前身がミノルタだったことを考えるとNEXに装着するのは正統的であるような気もする。

 

バッテリーとSDカードだ。実は他のカメラでおまけにつけてもらった予備バッテリーなので一銭も払っていないのだが、これを差し引くのはフェアではないのでバッテリーを1,500円、SDカードは1,000円にしておこう。

 

被写界深度がとれなかったが装着するとなかなか堂に入っている。フルサイズ換算で焦点距離75mmF1.7の中望遠単焦点レンズがついたカメラだ。とても8,500円とは思えない。いや…8500円にしか見えないような気もする。どっからどう見ても1万円はしなそうだ。ちなみにこれをフルサイズで再現(α7R3にFE 85mm F1.8を組み合わせる)すると40万円くらいになる。

 

実写した。

 

永平寺。レンズは普通のダブルガウス。開放はちょっとザワつく。

 

絞るとそんなにフリンジも目立たない。

 

水の表現も電池蓋が閉まらないカメラとは思えないほどよく締まっている。

 

永平寺はお坊さんさえ撮影しなければあとは自由に撮って良いという、とても太っ腹なお寺。

 

普通によく撮れていてコメントしづらい。

 

 

 

 

 

こういうのを現像していると、なぜ自分が機材にお金を使うのかよくわからなくなってくる。この撮影の帰りにキャッシュバックにつられて85,000円のSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAを買ったが、この写真の10倍よく写るとは到底思えない。まあ、なんでもいいのだ。我々は機材を買う理由さえ見つけられれば、満足して買ってしまうのである。どうせ困ったら売ればいいし…(沼に沈んでいく)。

 

 




カメラレンズにはあれやこれや名前がついている。テッサーとか、ズミクロンとか…。そしてウルトロン。Ultronというレンズ銘はもともとフォクトレンダー社が使っているものだ。しかしフォクトレンダーがCarl Zeissに買収されたあたりで事情が変わり、ほんの一時期だけ、Zeissの名を冠するUltronが作られている。そのあたりのすったもんだはグーグル検索してもらえば他の詳しい方が解説してくださっているので省略する。

 

Carl Zeiss Ultron 50/F1.8はスペックを見る限りごく平凡な標準レンズだ。前玉が凹形状をしているという点を除けば。この摩訶不思議な設計はバックフォーカスを確保して、一眼レフでもUltronを使えるようにするための突貫工事の結果のようである。もともとUltronはレンジファインダー用のレンズだ。日本メーカーのレフ機一大攻勢によってフォクトレンダーが追いつめられたため、とにかくZeissもさっさと一眼レフに対応しなければという焦りがそうさせたのだろう。レンズを再設計する時間がない。じゃあ前玉をへこませろ、という魔改造的発想。

 

 

 

この凹みウルトロンは中央の解像度が素晴らしく高く、いっぽうで周辺部はかなり柔らかい描写になる。M42のZeiss UltronをsdQで使用したが、テレセン性がないためかあるいは個体差のせいか、周辺の色ノイズがすごかった。しかしその一見して荒れた描写と、ピント面の素晴らしい画の落差が、魔法のように被写体を際立たせることに繋がっていると思う。

 

このレンズはズミクロンとまではいかないが結構人気がある。そういうのを集めて(2000円くらいのSMC Takumar 55mm f1.8とかマウントアダプター買ったらついてきたミノルタのレンズとかその他もろもろの標準レンズ)描写を比べてみたことがある。こういうことをやりたい人は結構いると思う。少々お金もかかるし、この沼に手を突っ込む前に僕の意見を参考にしていただければ――結論、標準レンズに駄作なし。